シェアハウス専門ポータルサイトのスタッフによる、シェア生活を楽しむための探検レポートブログ。東京、神奈川、千葉、埼玉、 そして全国各地のシェア賃貸住居をひたすら探検する専門ポータルサイトの隊員達。明日はあなたの物件へ・・・!?

改装に要した1年は、親孝行に費やした時間。


今回の舞台は、大分市にある昔ながらの学生向け下宿屋さん。大きなひとつの建物のなかには、2つの家がありました。ひとつは、ご家族が生活する家。もうひとつは、下宿として貸し出される家。

やがて時は流れ子供も成長し巣立っていくと、家族が生活するスペースにはだんだんと空き室が目立つようになってきました。

でも、下宿屋と家族の境界、建物の間取りは簡単に変更はできません。だからと言って、このままにしておくのは勿体ない。下宿屋は繁盛して入りたい方が待っているにも関わらず、同じ建物内の空いた部屋を貸すのは難しい。。

そんなジレンマを抱えた状態に立ち上がったのは、家から巣立った下宿屋の息子さん。「シェアハウスプロローグ」の運営事業者さんです。

胸に秘める思いは、生み育ててくれた母と家への恩返し。

巣立った家族の部屋を減らし、その分下宿屋だったスペースに共用部を備えて専有部を増やしました。また、改修にあわせて学生さんだけではなく、社会人も入居可能としました。部屋数が増え、今までよりも入居希望者を断ることも減ったそうです。

特筆すべきは、息子さんが大工さんと2人3脚で行ったリノベーション工事。育った家に自らの手で改装を行うなんて、なんだか眩しい。ただ貸せれば良い、という次元を超えた強い想い入れがあったからこその密度の濃い空間は、好みはともかくまずは必見。

最後まで付き合う意志と愛情を込めて徹底的に取り組んだものづくりには、それがどんなに突き抜けた内容であっても「イイ!」という人はいるのだと思います。

では、将来を見据えた決断が下された空間を見てみます。


建物の外観は、防犯上の事情から今回は無し。

そこで、まずはアプローチから。

外と内の雰囲気と気持ちを中和させる、たっぷりした道のり。

どこか古めかしい大きな鉢植や門扉も、意外や雰囲気によく馴染みます。真っ赤なポストは、元からあった郵便受けの上に付けたのでしょうか。

立て掛けられた石版には、やわらかな書体でサインが刻まれています。

友達の石屋さんに作ってもらったそうですが、いいですねぇ。

門扉をくぐり数歩進むと、そこは正面玄関。

大きくて可愛らしいドアは新設されています。

ふと瓦に目線を移すと、寿を抱いた亀。縁起が良さそう。

亀は長寿のシンボルですが、建物自体も築70年を越えているのだそう。まぎれもなく長寿。


玄関のドアを開けると、頭上からチリンと澄んだ鈴の音。

毎日、行きと帰りに心地良く心に響きます。

そして、目の前には杉をふんだんに用いた玄関。

土間も広く、ほどよい高さに鏡もあります。

右手の靴棚は部屋ごとに横一列を使えるので、十分すぎる容量。

それでも、もしも足りなくなってしまった場合は写真のように間に一段細い板を増設できます。学生下宿として運営されてきたこともあり、靴揃えも「らしい」風情。

土間や靴棚周辺は、まだ未完成の部分があると言う事で、さらなる改装を予定しているそう。そして、廊下に見える大きなガラスの引き戸の先はリビングです。

ガラスの模様も古めかしくて良い雰囲気。

引き戸は玄関から見て左側だけ開閉できます。

何十年も使われていた引き戸です。


いよいよ引き戸をあけて、リビングへ。

目の前に現れるのは、抜けの良い広々とした空間。

天井も高く、掃き出し窓からはほどよく自然光が入ります。白く塗られた壁も、明るい印象をかたちづくります。

一部、床が変形して低くなっていて、手作りのローテーブルが置かれています。空間デザインは、友人の設計士さんの力を借りそう。小上がりならぬ、小下がりといったところでしょうか。斬新です。

新手の掘りごたつのようでもあるな‥なんて思っていたら、

実は端材を組み合わせて作られたテーブルは、コタツとしても使用可能とか。

低くなっている床は本来ゴザ敷きですが、冬期はホットカーペットが敷かれます。聞けば本当は畳にしたかったものの、変形していて畳屋さんに難しいと言われてしまったそう。

こんなところからも分かる通り、広めの空間、木造、築古ということで、冬はそれなりの寒さを覚悟する必要はあるかと。見渡すと、キッチンや洗面台の仕切りに布を掛けたりと、色々対策がされていることが分かります。

座布団に腰掛けて、周囲を見渡すと新鮮な視点。

うーん、興味深い。普段は気付かない発見がありそう。

リビングに共用PCはありませんが、代わりにiPadが設置されています。

みんなで見る、使う、という事なら事は足りそう。きっと皆さん個人のPCはお持ちと思いますので。

天井には、下げた床と同じ形をした縁取りが浮いています。

飾りとしても充分にインパクト抜群で意味ありと思えるこいつですが、現在は未使用との事で、面白い使い方を絶賛募集中だとか。

モノを置くには高すぎて、植物を置いても水やりが大変そう。布を張ってリビング全体をテントっぽくするのは面白そうですが、完全にネタですね。ちなみに耐荷重は強くないので重すぎる案はNGです。


壁面には作品が飾られていて、スポットライトを浴びた様はまるでギャラリー。

版画のタイトルは「古い家」。偶然だそうですが雰囲気もぴったりです。

無造作に見える壁面の凸凹も、よく見ると一部は額縁のようなデザインになっています。作品の右にある放射状の細い切れ込みも、広がりを持たせるための意匠、との事。

ちなみに、お琴はお母さんの嗜みだそうな。

実は家族のスペースを減らした際に、置き場所に困っていたらしいのですが、今では飾るべくして飾られているかのよう。

掃き出し窓の脇の棚では、「ひとり暮らしでは行わないような季節のイベントを忘れずに行いたい」とのことでマメに飾り替えを行うとか。

撮影時に飾られていたのは、お内裏様とお姫様。

下の棚にはインテリア関係の本が並び、ひつじ不動産が監修した「東京シェア生活」も混じっています。

こんな遠くの土地で読んでくれている人がいると思うと、嬉しいですね。同じ棚には、素敵なポストカードも積まれていました。

一番上はグスタフ・クリムトのフリーズ装飾の一部。

ポストカードはかなりの数がありますが、事業者さんが学生時代に働いていた美術館が閉館になるという事で譲って頂いたのだそう。

リビング空間は入居者さんの希望があれば、ギャラリーとして開放する事も考えているとのこと。

大分芸術文化短大も近くにあるので、良いのかもしれません。

ちなみに入居者さんが出払っている時は、お母さんと近所の方の井戸端会議の場としても使いたいなーとも考えているとのこと。


さて、玄関脇にチラリと見えたウッドデッキのテラスには、リビングの掃き出し窓からサクッと出られます。

一部に屋根が付いていて、雨の日でも使えます。

春先から秋口の気候が穏やかな時期は、テーブルセットが常駐しそうな気配。

暖かくなると、花壇の緑もグングン育ちそう。


続いて、琴の脇の暖簾の先にある・・・

キッチンを見てみます。

実は下宿屋さんということで、平日朝晩はお母さんが食事を作ってくれます。一見高めに見える共益費の中には、なんと食事代が含まれているのです。そう思うとかなり安いのでは。

食材にも気を遣っていて、契約農家からお米を仕入れたり畑で有機野菜を育てたりしているそう。調理師免許を持つお母さんが腕を振るい、献立は和食中心で組み立てられているそう。この下宿システム、外食を考えれば安上がりですし、栄養バランスの点を考えれば社会人でも嬉しいような。

ともあれ、基本的には週末と夜食の為に用意されたキッチンと考えて頂ければ。

深く大きめのシンクは、飲食店などで使用されている形状。

脇には洗い物用でしょうか?正しい用途は不明ですが、水だけが出る蛇口もあります。

IHコンロは2口、台は合板で作られ、こちらも非常にシンプル。

食器棚には、オーブンレンジと電子レンジも収まっています。

なお、最近、食器棚の脇に調理器具を掛けたりキッチン小物や調味料を収納できる棚が新たに設置されたそうです。

棚の中には、食器も。必要十分な数です。


シーンは変わって、リビングの階段下の掲示板へ。

ここにハイテク器機が2つあります。

1つ目は女性専用の住まいということで、ホームセキュリティ。

玄関先にカメラが回ってます。

で、2つめがお母さん専用のモニタリングカメラ。なぬ、と思いますがコレ、食事を運ぶタイミングを見るために使うのだそう。

食事の時間が近くなるとリビングに人が集まってくるのですが、毎日時間キッチリに全員が揃うわけではありません。そこで料理が冷めないように、モニタ越しに虎視眈々とお母さんがタイミングを見計らっているのだとか。

なるほどです。以上、ハイテクでした。


続いては、水まわりの設備を。

キッチン脇にあるのですが、リビングから見るとドアが分かりにくいのです。

木材をランダムに配置して、意図的に隠し扉のように目立たなくしたのだそう。

副作用として引き戸がズッシリ重く。こいつはベヴィーです。

両手でドアを開けると、正面にコイン式の洗濯機と乾燥機があります。

洗濯機の脇には共用の掃除用具やアイロン台があり、乾燥機の脇には各々洗剤などを置けるようになっています。

ちなみに、リビングから見て右手がシャワールーム、左手がバスタブ付きのバスルーム。

バスルーム側の脱衣室のドアは廃材の再利用で、ドアを2つ組み合わせたもの。

取っ手が2つあったり、かなり「まんま」な仕様。しかもこの形で引き戸だったりします。

脱衣室には、小さな手洗い場があります。

バスルームは思い切った配色。

ピンクのタイルに黄色い壁、天井は空色で傾斜があります。

シャワーヘッドの固定位置は1つ。ヘッドの角度にあわせてバススツールを移動すれば大丈夫。・・・いやいや、もう1箇所増やしてと伝えれば対応してくれそうな予感もします。

足つきのバスタブは、比較的ゆったりした贅沢なタイプ。


反対側にはシャワールーム。

バスルームとは打って変わってスタンダード。

と思いきや、全身鏡が付いている珍しいタイプ。日頃からボディラインのチェックができそうです。毎日、体と向き合うことはとても大事。

ま、普通に何かと便利ですよね。


続いてはお手洗い。ピンクの壁に溶け込んだドアを開けます。

壁に埋めこまれた丸窓の明かり取りは、ガラスのカットも可愛らしく。

実はこの窓、ガラスの灰皿なのです。

自由で秀逸なアイデアに嬉しくなってきます。ユニークな住まいの工夫にたくさん出会えるのは、僕らの仕事の醍醐味。

洗面室を軸に、トイレは2室です。

どちらも、暖房便座が付いています。

標準的なトイレですが、窓枠にメッセージのスタンプがあります。

「FIX WINDOW」=開きませんよと。


お次は洗面。リビング脇の暖簾の奥のスペースに、テイストの異なる洗面台が2つ並んでいます。

リビングとの間を隔てる布は、防寒対策として冬期間のみの設置です。

どちらも鏡の裏に蛍光灯を仕込む芸の細かさ。赤い方の流しの台は、ハンドツールを入れる工具箱に見えます。

袖壁には歯ブラシなどを置けるように小さな棚が作られています。写真のように棚幅が意外とタイトなので、大きなコップは置けないものの、細かな工夫が便利です。


物干し場は洗面台の脇に。

外には目隠しがあり、普段の使用にも配慮されています。

物干し場には屋根もあるので、天候を気にせずに使えます。


1Fは全て共用スペースで、専有部は全て2Fです。

階段に蹴込み(つま先が当たる部分)はなく、抜けています。

手摺はステインでブラウンに。


2Fの廊下に出ると、色とりどりに塗り分けられた個性あるドアが並びます。

床は1Fの板の向きと揃えています。

コレは、こだわりの部分。


それでは、まずは205号室から専有部を見てみます。

光沢のあるブラウンの床が特徴的。

板の敷き方も、ザックリとしていて隙間があったり。

収納スペースもあります。

ご覧のようにシンプルなハコですが、部屋ごとにベースとなるテイストは大きく異なります。ベースが面白いので、インテリアを考えるのはかなり楽しそう。

何を置いても映えるとは思うものの、せっかくの貴重な建物、最大限活かしきって頂きたいものです。


続いては208号室。足元を見ると廊下とのボーダーがクッキリ。

室内の床と天井は、素材を活かすよう塗装は控えめ。

おかげで木目もクッキリと見えます。

天井は高く抜かれ、梁も出ています。

筋交いなどは、昔のまま触れずに残してあるそう。

階段に面した明かり取りは、照明器具を流用したものだとか。

ドアノブと壁の間にはクッションが。

ほんのりとズレているのが愛嬌です。


続いて、建物の脇の自転車置き場。

屋根付きで駐輪は無料です。駐輪の際は、前輪を鉄筋にはめ込んで位置を固定します。

こちらも頼んで作ってもらったのだとか。シックリくるモノが無かったら作る、工夫する、流用する。そのスタンスにはとても共感。

ちなみに手前にある木の蓋が被されているのは、なんと井戸。現役で使用できるので、災害発生時には近隣に解放するように市に申請をされているのだそう。やはり、地域の方々とも長ーくお付き合いしている様子。良いことです。


続いては、車で20分程の距離にある畑。

最近では東京でも増えてきた農園付きシェアハウスですが、さすがに真似できないボリュームと景色。

プロローグ専用の畑では、野菜が有機栽培されています。希望があれば入居者さんも使っても良いそうですが、ちと遠いので、物件近くに入居者さんが気軽に使えるような菜園も計画されているそう。


最寄りの駅はJR大分駅。シェアハウスからの所要時間はバスで10分程度です。

普段は駅を基点とした生活はあまりなさそうな印象で、バスや自転車、バイクや車を使うことになりそう。駐輪スペースの関係もあるので、原付やバイクの利用については事前に確認をお願いしたいトコロ。


さて、運営を行うのは「シェアハウスプロローグ」さん。お母さんが常駐し、大阪に住む息子さんが適宜訪問といった管理になります。

案内があると、大阪から夜行のフェリーでやってきます。アパレル関係でお仕事をされていたそうで、館内の装飾にユニークなセンスがにじみ出ています。

ご自身で手を動かしてリノベーションを行ったこともあり、既に建物の事は知り尽くしています。専有部内の棚の増設といった住まいに関する要望や改善案にも、柔軟に対応してくれそう。滅多にないチャンスなので、一緒に作ってみるのも楽しそうです。

今後も玄関まわりのリニューアル等を行うとの事ですが、直近の課題はすきま風が入らぬよう1つずつスキマを埋めていくことだそう。先は地味に長そうです。

共用部の清掃はお母さんが行い、食事も付くので長く住んでしまうと自立心が芽生えない可能性があるのでは、と心配されていました。

確かに自炊や健康管理の自己管理は大切かも。学生さんでしたら2年程度の期限を定めての入居、というのも考える余地がありそうです。とは言え、ではプロローグのような空間を他に探そうと言っても・・・大分はおろか、僕らの知る限り日本全国でもなかなか。

ということで、現在(2012.2.27)は満室のようですが、空きが出ているのを見つけた大分っ子は、ゼヒコチラからお問合せどうぞ。


私事ですが、実はおじいちゃんが下宿屋を営んでいました。小学校を卒業して1年ほどその家で暮らしていた頃、僕の部屋から襖1枚隔てた先には大学生のお兄ちゃんが暮らしていました。

時には海水浴やゲーセンという未知なる場所に連れて行ってもらったり、スーファミで対戦したり。夜な夜なストII(ストリートファイター2)で鍛えられたお陰で、やがて立派なエドモンド本田使いとなりました。

どすこい。

関係ないと信じていますが、今でもバイクはホンダに乗っています。

おじいちゃんの下宿屋は学校の廃校で廃業したけど、家族以外の人と住むことの楽しさや価値は、小さい頃から肌で感じてきました。だから、下宿文化が失われていくのは非常にもったいない気がします。

下宿、頑張って欲しいモノです。

(サトウ)

Share-House Prologue昭和59年から28年続く女性専用のシェアハウスです。これまで70名以上の先輩たちがこの場所から巣立っていきました。当ハウスのポイントは365日管理人常駐で手作りの食事つき。親元を離れ一人暮らしをするにあたり、...

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