移り変わる季節、歴史|京町家のシェアハウス 京だんらん 西陣千両ヶ辻のレビュー

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奥へ奥へと興味をそそる、"うなぎの寝床"の魅力。


駅から目的地まで歩くこと13分。

その日、京都は気温36度に達しました。駅を出るなり身体はすっかり火照ってしまい、両手の荷物が意識を朦朧とさせました。ただ、京町家の並ぶ西陣に足を踏み入れると、どこか涼しげな気持ちになったことを覚えています。

たどり着いた先は、「京だんらん 西陣千両ヶ辻」。

先日、ダイジェストでチラリとお見せした、京町家を改装したシェアハウスです。

敷地の奥行きは約30メートル。

京町家ならではの「通り庭」と呼ばれる土間から、中庭を望む縁側から茶室、ダイニング、蔵へと空間が幾重につながります。

先へ先へと進むにつれて様々な表情を見せる住空間。奥底で眠っていた冒険心が、チクリチクリと刺激されます。

足を止めて目を閉じると、ゆっくり流る時間をしっかりと感じることができます。通り庭の外とも中とも言い表せない不思議な空間は、アスファルトの熱気やビルの反射熱を忘れさせてくれる雰囲気に包まれています。

時おり、足下をすーっと風が通り抜け、どこからか風鈴の音が聞こえる。すると、夏の景色がふわりと浮かぶ。

どこか懐かしく大切にしたいシーンを運んでくれる気がします。たぶん、春も秋も冬にも。

今もう一度確かめておきたい風景を運んできてくれる日常が、はじまる予感がします。


最寄りの今出川駅から、今出川通りを真っ直ぐ。堀川通りとの交差点を超えたあたりで住宅街へ一本入ります。

すると、とたんに京町家が立ち並ぶ西陣の風景に。

京町家の面々の中、大きくセットバックした外観が特徴的な一軒。

思わず背筋が伸びそうな、凛とした雰囲気のアプローチ。ここが「京だんらん 西陣千両ヶ辻」です。

よく見ると、規則性を持って並べられた石畳。どこかモダンにも見えます。

玄関の引戸は、ポーカーフェイスながら夏と冬で違った一面を見せてくれます。

それはルーバーの隙間部分。1枚はガラス、もう1枚は網戸。夏場は網戸をメインの扉とすることで、ドアを閉めたままでも通気可能な素敵な仕掛けです。

玄関を開けると建物の奥にある裏庭まで、約30メートルも続く土間。この土間を「通り庭」と呼びます。この長い通り庭が京町家を「うなぎの寝床」と表現する由来です。

多くの京町家の通り庭は、かつては炊事場だったのだそう。高さ5〜6メートルはありそうな吹き抜けに、天窓を設けた排煙設計のつくりは、その名残なのだとか。かつては熱や煙を逃がすために必須だった設備ですが、今では優しい光を届けるトップライトの働きをしてくれています。

そしてふわりと浮かぶまぁるい照明。ドキドキ。期待が高まります。


そのまま、奥へ奥へと吸い込まれそうな気持ちをグッとこらえ、玄関まわりを見ていきます。

土間とタタキは靴箱によってゾーニングされています。

土間部分の白い扉はすべて靴箱。中で高さが変えられます。

玄関扉のすぐ脇には、アウトドア用品などを収納する戸棚も設置されています。

さらに、廊下側にも容量たっぷりの靴箱。

ロングブーツなどが多くなければ、ひとり10足は充分しまえます。とても心強い収納力です。


さて、うなぎの寝床を奥へと進みます。

廊下の両側はガラスの掃き出し窓。通常の廊下よりも、建物と建物をつなぐ渡り廊下のような感覚です。

すこし進んで振り返ると、チラリと見えていた坪庭の全貌が。

太陽の光がサンサンと取り込む建物のつくり。建物内を明るく照らす役割も担っています。

そして、そこには小さくも風情ある眺め。

白い玉砂利と苔とのコントラストに、思わず目を奪われます。


廊下の先にはダイニングが待ち構えます。

日本庭園や町家の落ち着いたイメージとは一転、明るくサッパリとした空間。

突き当たりの一面はほとんど窓。たくさんの光が差し込んで、優しい色合いのダイニングをふわりと包み込みます。

特徴的なヘリンボーンの床がアクセント。視線を奥へと誘導するような効果もあるかもしれません。

デザインはかわいらしいのですが、やわらかい色合いの中で一際存在感を放つポスト。

オーナーさんのお母さんがお住まいだったときに実際に使っていたものなのだそう。入居者さんからの意見を聞く目安箱として、新しい役割を担い始めたばかりです。

こちらは、出窓を利用したベンチが特徴的なコーナー部分。

白いサッシを使うことで窓枠の存在感を弱め、より開放的な空間を演出しているよう。

そして、空間の主役となるのは8人掛けの大きな一枚板のテーブルと、北欧の雰囲気も感じるチェアです。

空間や使い方のイメージを細かく伝え、オリジナルで作ってもらったのだそうです。

木目の綺麗なナラ材が使われ、さらりとした手触り。改めて、無垢材の心地よさを再確認できます。

実はチェアの座面に使われたファブリックは床のヘリンボーンに合わせたパターン。

新しくもあり、どこか伝統模様の懐かしさも感じられる、不思議な感覚です。


キッチンはダイニングの脇にあります。

細長く横に広がるキッチン。

作業スペースと食事をとるスペースがカウンターによって区切られ、動線がぶつからない設計です。

スタイリッシュなデザインのオーブンは、裏庭で育てた野菜を調理するのにもってこい。収穫したての野菜を粗塩でローストして食べたいなぁ、なんて。グッと料理のバリエーションが広がりそうです。

カウンターの上には収納スペースがずらっと並びます。

シェアハウスの運営経験から、特に注力したという収納スペースの確保。

暮らしを快適にする大切なポイントをしっかり押さえています。


続いて、ダイニングの隣にある和室へ。

以前はお茶室として使われていたのだそうです。

元々ある材や建具はなるべく残し、雰囲気を大きく変えないように修繕していったのだとか。

ぼんやりと広がる行灯のような照明が、さらにムードを演出します。

ダイニングとの間は襖で仕切ることもできます。

ちなみにこの襖、簾戸(あしど)に変えることもできるのだそう。玄関同様、夏は自然の風が通るような工夫が施されています。

実は小さなにじり口も。後ほど外側から見て行きたいと思います。

休みの昼下がり、畳にゴロリと寝転がる。

これが最後、と力を振り絞るセミの声を遠くに聞きながら、夏の終わりを感じたりして。


さて、続いて水まわりを順番に見て行きたいと思います。

玄関近くの廊下はランドリースペース。

洗濯機と乾燥機が分かれていて、効率よく洗濯物を回すことができます。どの専有部からも適度な距離があり、音が気になりづらいのも生活していく上では重要なポイント。

向かいには、バスタブ付きのバスルームとシャワールームがひとつずつ。

脱衣室は洗濯機を設置しても余裕なほど、ゆったりサイズです。

温かみのある色合いのタイルが、どの季節にも快適なバスタイムをもたらしてくれそう。

窓から差し込む光との組み合わせを見ると、朝の時間もきっと気持ちよいはずです。

一歩足を踏み入れると、足にザラリとした感触を覚えます。

なかなか珍しい洗い出しの床。

その窓からは中庭がチラリ。

外からの目線はしっかり遮ることができるよう、ブラインドが設置予定とのこと。ただ、視線がないときには緑を眺めながら、ゆっくりバスタブに浸かりたい気もします。


シャワールームはスタンダードなタイプですが、全身鏡付き。

時間やタイミングによって、バスルームと上手く使い分けをすると良さそうです。

トイレは全部で3カ所。

人数を考えても、不便な状況はないと思います。


2Fへ続く階段は、玄関からタタキに上がる入り口の目の前。

階段を上がった目の前は、開放的なホールのようなスペース。

特に目的が決まっている場所ではありません、とのこと。

ちょっと雑誌を読んだり、お風呂上がりに一息ついたりと、休憩スペースのように使うことが多くなりそう。

一角には洗面台も設置されていて、爽やかな朝の目覚めが期待出来そうです。

くるりと振り返ると、奥に吹き抜けが見えます。

開放感の秘密は天井が高いことだけではなさそうです。

近づいて見下ろすと、通り庭のちょうど真上に当たる位置。

「火袋」と呼ばれるこの空間。先ほど下から見上げたときとは、また少し印象が変わります。

年季の入った木製の窓枠の枠の先に、お隣さんの緑が。

朝ドラなどで見たことのある昔の学校の窓のようなレトロさに、ギュッと心を鷲掴みにされてしまいました。


それでは、お待ちかねの専有部を見ていきます。

まずは、201号室。

改めまして、「九条ねぎ」の部屋です。

そう、「京だんらん 西陣千両ヶ辻」では、全室に京野菜の名前が付けられています。撮影にお邪魔したときにも「堀川ごぼうと賀茂茄子、どっちにしよう〜」と、美味しそうな悩みが聞こえてきたり。京野菜の持つやわらかな響きが、建物の雰囲気に良く合います。

通りの面しているので、日当たり良好。

道路面ギリギリに建っていることの多い町家ですが、今回はセットバックして建っているいる分、向かいの家からの視線は少し遠めです。(とは言え、カーテンは必要だと思います)

斜め天井で、面積よりも開放感を感じる空間。

クローゼットの上のスペースにも物を置けたりと、収納力はなかなかです。


205号室は「賀茂茄子」。

各部屋とも間取りは素直な長方形。配置に悩むことはあまりなさそうですが、既に家具を持っている人は、広めの部屋を選んだほうが良いかもしれません。

引き違いの窓では珍しく、床の部分まで全面的に窓ガラス。

腰上の高さまではすりガラスになっていて、外部からの視線を避けるようにできています。


「賀茂茄子」の隣のドアからは、ベランダに出ることができます。現在は物干し竿も設置されているとのこと。

屋根には透明なポリカーボネートが張られ、多少の雨なら凌げます。太陽光もダイレクトに当たりますし、洗濯物が乾くのも早いかも。

ベランダから下を覗けば、坪庭が。

青緑の屋根の色は、銅と酸素・二酸化炭素等の化学変化で現れる「緑青(ろくしょう)」という現象なのだそうです。簡単に言ってしまえばサビなのですが、この明るい青緑色になるまではそれなりの時間を要するそうです。

下の屋根が最近張り替えた銅の屋根、上の屋根が元々あった既存の屋根。いつかは、下の屋根も緑青色に染まるはず。

パッと見ただけでも、時間の経過を感じるワンシーンです。


ベランダを挟んだ反対側にも建物がつながっています。

奥の建物へのアクセスは、ベランダを通るルートと1階の和室の隣から階段を上るルートの2種類。

ちなみにベランダを通るルートの場合は、内側から鍵が掛かっていることがあるかもしれませんのでご注意を。

爽やかなブルーだった手前の空間に対し、奥側はベビーピンクのかわいらしい内装。

階段の手すりは、リビングのヘリンボーンと同じ斜め模様に統一されています。ちょっぴり木の枝のようにも見えたり。


「聖護院大根」の206号室。大根ですが、見た目はカブに似ています。

各部屋のサインは、イラストレーターさんにお願いして描いてもらったのだそう。サインというより、飾られた絵画のニュアンスを強く感じます。

イラストだけで部屋の名前がわかるようになるまでには、ちょっぴり時間がかかるかもしれませんね。

緩やかな船底天井に、水平垂直の窓枠。

最も町家や和の雰囲気を残している部屋とも言えそうです。

建具は以前から使われていた年季物。

現代のサッシのようにスムーズに動かないところにまで愛着が湧いてしまいます。

実は収納もたくさんあります。

3段に分けられた収納に押し入れ、更には屋根部分を利用した地袋まで。

窓の向こう側に収納がある感覚、なかなか面白いのです。


最後に通り庭を進んでみます。

ガラス越しの縁側を横目に、先へ進みます。

和室のにじり口も、内部に人がいれば出入りができます。こういう小さな扉、いくつになってもワクワクしてしまうのですよね。

建物の屋根がかかった部分を抜けると、リビングの先のウッドデッキに出ます。

裏庭で採れた野菜を洗ったり、日向ぼっこをしたり、布団を干してみたり。

そしてウッドデッキの先には、大きな蔵が待っています。


それではいざ、蔵の内部へ。

外は30度を超えていても、薄暗い室内には土壁のひんやりとした空気が漂います。

奥の壁は一面の本棚。入居者さんが持ち寄った本を並べて、ブックシェアリングをする予定なのだとか。

ふと壁に目をやると、波打っていることに気付きます。

このうねりの正体は、壁の中に埋め込まれた横柱なのだそう。上から土壁を塗り固めることで生まれる、不思議な形状です。

この蔵、実は2階建て。

ハシゴに近い勾配の階段を使って、2階へ。

1階より明るく、天井の高い2階はより共用部らしくソファが置かれ、のんびり寛げるスペースです。

スクリーンとしても使えるように一面の壁は白く塗装されています。

人数を考えても適度なサイズ感。プロジェクターを持ち込んで、蔵で映画鑑賞会なんてなかなか楽しそうです。

そうそう、無線LANも完備してます。色々と活用できそうなスペースなのです。


蔵の奥には広々とした裏庭。

まだ手つかずの状態ですが、これから土を入れ替えて畑を作り、京野菜を育てる予定なのだとか。

入居者さんと相談して進めていくとのことで、イチから庭作りに携わる貴重な機会となりそうです。

自転車置場も庭の一角に。

自転車は、通り庭経由で移動させます。屋根も付いていますし、家の表側に停めておくより何かと安心です。


シェアハウス周辺は京都町家とアパートなどの現代住宅が混在する、住宅エリア。

大通りが近いですが、一本入ったとたんに静かになる場所でもあります。

最寄り駅は市営地下鉄烏丸線今出川駅。京都駅からは8分ほどです。

また、シェアハウスから2分の場所に京都駅行きのバス停があります。結構、便利に使えそう。バスだと京都駅まで30分ほどです。

駅の隣に同志社大学と京都御所が並び、とても緑の多いのが特徴的。

駅からはすこし距離があります。

個人的には自転車がオススメ。古都の街並を探索するにも、マストなアイテムになるかなと。


京だんらん 西陣千両ヶ辻」を運営しているのは「株式会社八清」さん。

京都の町家や年季の入った建物の再生&リノベーションを中心に行っている、京都の不動産屋さんです。

京町家が取り壊しの話を聞くと、つい「もったいない」と感じてしまいます。ですが、実際にそのままの状態で住むとなると、空間設備等や建物の状態がハードルを高くしてしまっているのも事実。

月日が経てば人の暮らし方も変わります。古い建物を壊して、新しく綺麗にしてしまうのは1つの手です。なにせ、<再生>となると、その建物の設計思想や暮らし方・使われ方をちゃんと理解した上で、現代の暮らしに落とし込んでいく作業が必要ですから。

ただ、八清さんは<再生>という手を選びます。手掛ける物件を見てみると、残すもの・新しくするものが絶妙な塩梅で、落とし込みされていることに惚れ惚れとします。しっかりとした知識と技術、建物の良さやポテンシャルを本当に良く理解しているからこそなんだろうなと、いつも思います。

スタッフの皆さんはとても気さくで、いつも朗らか。キリッと締まった雰囲気を持ちつつ、やわらかく穏やかな表情を見せる今回の物件は、スタッフさんたちにも通ずるものがあるような気がします。

中庭を眺めて四季を感じたい方、蔵に畑に通り庭、全てにグッと来てしまった方。もちろん、「町家再生、待ってました!」という玄人の方も。

専有部は着々と埋まってきています。お問合せはコチラからお早めにどうぞ。


移り変わる空間、季節、そして歴史。

飽きない魅力が詰まっています。

(テルヤ)

こちらの物件は22歳以上の社会人のみの受付となります。学生の方、申し訳ございません。また、長期(1年以上)の方のみの受付となります。京だんらん西陣千両ヶ辻は京町家をリノベーションしたシェアハウスです。シェア生活のライフスタイルをプランニングに反映し...

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